アラサー夫婦、京町屋を買う

明治期の京町屋を契約しました。築100年以上、さあ、どうしよう

持ち家派?賃貸派?夫婦でこれからの家を考えた【中古住宅→新築注文住宅→京町屋、全てを通ったわたしたちが通ります②】

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平成初頭の中古住宅に振り回されているうちに数ヶ月が過ぎました。

気軽にはじめたものの、なかなか順調とは言い難い現実に疲弊したわたしたち。ここで改めて賃貸で暮らすか?家を買うか?今後の見通しを改めて整理することにしました。

現在私たちが住んでいるのは子どもが産まれてすぐ引っ越した築50年超えの2DK10坪のアパート。30平米ちょっとの空間でコロナ以前から夫婦揃ってほぼ在宅ワーク、加えて育児という生活をおよそ4年間、続けてきました。

家庭のスペックを考えると圧倒的手狭ですが、学生結婚で貧乏だったわたしたちにとってはそれでも背伸びをしたほうでした。しかし、結婚2年目で2人とも働きはじめるとだいぶ経済状況は改善し、もう一回り大きい家に住むこともできそうだ、となってかれこれ三年、結局引っ越さなかったのは、私たちのものぐさ精神からでした。

家がどんなに狭くても、プライベート空間がなくても、引っ越しというエネルギーを使うくらいなら現状を受け止めたほうが楽。そんな暗黙の了解が夫婦の間で流れていました。

また夫婦揃って旅行やレジャーがあんまり好きではなく、コロナ禍もあいまって休日はたいてい家で過ごし、在宅ワークしている平日も当然家、家家家の家三昧。特に夫は実の親に自家中毒とののしられたわたしですらこいつには勝てねえ、と思ったくらい家でなんでも楽しめるタイプです。旅行前に家を出るのがめんどくさくなる、はみなさんあるあるかもしれませんが、夫はちょっとそこまで買い物、ですらその現象が起こってしまうため、家のドアを開けるときはたいてい憂鬱そう。家族でいるときはもちろん、1人になると引きこもり強度はさらに高まる傾向にあります。以前、わたしとむすめで実家に一週間ほど帰ったときには、ほぼ毎日朝昼晩とテレビ電話をしても背景はいつも家の壁でした。

当然車なんかも乗りませんし、夫は免許も持っていない始末です。

どう考えても、わたしたちが課金するべきは家なのです。

さらに夫は建築好きで、今よりはアクティブだった大学時代には数学科だったにも関わらず、他大学の建築旅行にこっそり参加するほど。そんな夫はルイス・バラガン邸のような大きい窓に庭がある、そんな家に住みたい、などと曰います。そんな賃貸、なかなかないですよ!

ここまでの要素をまとめると、

  • 圧倒的ものぐさで引っ越しがめんどくさすぎて惰性で同じ家に住み続けてしまう
  • 外出はほぼせず、夫婦揃って24時間365日の大半は家で過ごす
  • 旅行やレジャーにほぼお金を使わない
  • 夫はルイス・バラガン邸のようなでかい窓を夢見ている

となり、わたしたちこそがトゥルー持ち家パーソンなのではないか、という結論に至りました。

とはいえ、わたしの夫は天邪鬼なので、一つの家に縛られるのは、、、などと急に言い出したりもしますが、これまでの引っ越しでも、家探しはもちろん、引っ越しの手配までわたしがやり、引っ越し準備の時はずっといやや…いやや…もう一生引っ越したくない…と言いながら荷物を詰めていましたよね、と過去を引っ張り出すことで納得してもらう一幕も。

そしてそんなわたしたちが考えた次のアクションが「注文住宅の検討」だったのです。

たかが建ぺい率、されど建ぺい率、買えない中古物件編【中古住宅→新築注文住宅→京町屋、全てを通ったわたしたちが通ります①】

家探しをはじめたきっかけは、むすめの同級生Aちゃんを預かったときのことでした。

Aちゃんのお母さんが落語を見にいきたいと言うので、我が家でむすめさんを預かり餃子を作ることになったのです。

とはいえ、このご時世、落語は結局中止になりました。しかし、おませなAちゃんはすでにひとりで友だちの家で過ごす覚悟を決めていたのです。強い意志でお母さんは来ないで、と宣言し、予定通り我が家に遊びにくることに。お母さんには一人の時間を楽しんでいただくことにしました。

我が家の面々もむすめの友だちが1人で来る、という珍しい出来事に浮き足立ち、わたしは掃除機で床掃除を、夫は買い物袋を引っ提げて餃子の下準備を、むすめはいつもより気合のはいったおもちゃの選別を、とてんやわんやの大騒ぎでした。

そうしてAちゃんを迎えたときにはみんな心の準備はバッチリでした。

とはいえ、4歳児が2人揃うともう大変。あっちにこっちに走り回り、夫と夜な夜なしていたポケモンカードも引きずり出され、あっという間に時間は進みます。

餃子をたらふく食べて箸の進みがとまったころ、Aちゃんのお母さんがケーキを携えて戻ってきました。

みんなでケーキをつつきながら、Aちゃんのおうち事情を聞きます。

Aちゃんのおうちに遊びに行ったことがあり、とても素敵なおうちだと知っていたので、さぞかしお高いんでしょう、と話を聞いてみたところ、ローンの返済額はなんとうちのアパートよりも安く、あらあらあら、あんなに素敵なお家が?そんな価格で?あらあらぁとなり、わたしと夫はすっかり持ち家に心を向けられてしまったのです。

そうして、すっかり夜は深け、Aちゃん親子は帰ることになりました。見送ったAちゃん親子の背中が視界から消える前に、わたしはソッコーでsuumoを開き、希望の条件「京都市 左京区」で中古物件検索したのです。

無数の中古物件を「価格が安い順」に並び替え、築年数が30年未満のモノを対象に上から順に見ていきます。いくつか見ていくうちに、なんだか素敵そうで、異様に物件情報がくわしい住宅が目に留まりました。

ここだ、と思い、すぐさまお問合せをかけ、翌日の連絡を待つべく眠りました。

そして翌日、メールボックスを開くと不動産屋さんから連絡が来ており、早速内見の日を決めます。

ママチャリで東一条通を駆け抜け、着いた先にあった家は、サイズ感も親子三人にぴったり、再建築も可能で、トイレや浴槽のタイルにも意匠が凝らされており、もちろん価格もミニマルな素敵なおうちでした。

数千万円の商品を前に姫になってしまったわたしは「まぁここがいいわ」と前向きな態度を示します。

すると不動産屋さんはローンの審査をしましょう、お二人とも正社員、ダブルインカム、ローンは余裕です、とかましてくださったので、「では夫を連れて内見ののち、合意が取れればローンの申し込み用紙をお持ちしますわ」と姫のわたしは提案します。

そうして連れていった夫もまんざらでもない様相で、あらあら、あっさり家決まっちゃったかしら、うふん、なんて思いながら威風堂々、ローンの申し込み書類を提出します。

1週間後、不動産屋さんから連絡が来ました。

すいません、ローンダメでした……

えっ?頭がまっしろになります。

ローンは年収の4倍未満、余裕のはず……もしかして、ブラックリスト?いや、そんな記憶は……なんてぐるぐる考えながら不動産屋さんにローンに落ちた理由を聞くと、

物件の建ぺい率がオーバーしていて……

ということでした。

たかだか建ぺい率、ガタガタいうな、fuck the 建ぺい率!!!

姫なのにさまざまな罵倒が浮かびましたが、大人ですのでなんとか堪えました。

その後も物件を見続け、一見建ぺい率を満たしており、減築プランを出すことで容積率も満たせそうな京町屋風の大きくて素敵な中古物件をみつけ、そちらもローンを申請してみました。数年前にもローンが通った履歴があり、ここは行けそうですよ、と言っていただきましたがそちらもローンに落ちてしまいました。

唇を噛み締め、なぜ、と問うと、セットバックが必要な物件でセットバック分を差し引くと建ぺい率をオーバーするというのです。

fuck the セットバック。

調べてみると2018年のスルガショック以降、比較的建ぺい率、容積率にも寛容とされていた関西の地銀でも、建ぺい率、容積率を厳密に審査するようになったそうです。

しかし、土地の値段が高騰し、建ぺい率を明らかにオーバーしたぎちぎちの家が立ち並ぶ京都で課される建ぺい率60%はあまりにも酷ではないでしょうか?

そんなことを思いますが、恨んでも仕方ありません。お値段も手頃で魅力的な物件が多数ありましたが、安いには訳がある。ここでわたしたちは築30年未満の中古物件の可能性を捨てました。

さようなら、全ての違法建築。

わたしたちの家探しはこれからだ!

一世一代、明治期の京町屋を契約しました! 大金に冷や汗

今日、家の契約に行ってきました。

契約したのは築100年以上、明治期の京町屋。
夫婦共有名義ということで互いに銀行から現金をかき集めた手付金を抱え、バスに乗って契約へ向かいます。

手付金というと、家や土地の取引価格の10%程度が相場と言われており、その相場どおりに用意した鞄の中の人生初の札束に夫婦で冷や汗をかいたものです。とはいえ、契約に向けて、むすめを友人に預けたため、久しぶりにゆっくり夫婦で歩く時間はなんだかとても楽しくて、大金という刺激もあいまって、いい思い出になりそう。

契約場所となる不動産屋さんは最近新事務所に移転したばかりなので、Google mapを2人でのぞきながら歩きます。途中、素敵に改装された京町屋を見かけて、わあ、いいね、なんて言いながら通り過ぎたのですが、その「素敵に改装された京町屋」が実は向かうべき「新事務所」であったことに気づき、夫婦でキャッキャと盛り上がってしまいました。

外観はもちろん、内装はもっと素敵で、契約の前に10分程度、新事務所を案内していただきました。連棟だったという2件をつなげた町屋は、シンプルなようで複雑な間取りをしていて、こっそりと用意された小屋裏や屋根上の不思議な物干し、部屋と部屋をつなぐ廊下に貼られた滑らかな杉板など、魅力的な要素で溢れていました。

いつまでも見ていたいような気持ちになりましたが、今日の目的は契約。ということで、綺麗な畳の応接間に案内され、契約前の説明事項を聞くことに。

家の売買契約には1時間程度かかります、と事前に言われていましたが、わたしたちは「契約なんて、名前書いてはんこ押すだけでしょ?」などと不遜に囁き合っていました。しかし、実際に話を聞いてみると、都市計画の規制や、長い歴史が記載された謄本など、聞けば聞くほど「なんだそれ!」なことが出てきて、夫婦揃ってたくさんたくさん質問をしてしまい、結局、2時間くらいかけて説明をいただきました。根気強くわたしたちの疑問に答えてくださった不動産屋の担当の方には本当に感謝しかありません。


さまざまな説明を受け、わたしたちは夫婦でよし、と気合を入れ合い、まさに一世一代となる契約に進みました。
とはいっても、たくさんの書類にひたすら名前を書き、押印するのみ。

流石にお金を受け渡すときは緊張で少し手が震えましたが、なにせ普段から大金に縁がないゆえに、目の前で数え上げられる札束はどこかひとごとのようで、母ゆずりのおしゃべりのわたしは、担当の方がお札を数え間違えないよう、黙っていよう、と身をすくめていたことだけを覚えています。

契約書の埋めるべき場所が埋められ、金銭の授受も終わった後は、この後の流れ、として改装をどうしよう、という話に。不動産屋さんが出してくださった過去の取引物件の改装資料がこれまたとても素敵で、夫とこれすごく雰囲気いいね、これもいいけどちょっとうちの好みからずれているかも、なんてぺちゃくちゃ言い合います。

これまでの家探しの中で出会った、ここだ!という工務店さんにお願いしたいのです、という話を不動産屋さんにすると、それではうちと、工務店さんとご夫婦で、どこかで予定を合わせて家の内覧と打ち合わせをしましょう、というありがたいご提案をいただけて、ああ、いい不動産屋さんと出会ったものだと思いました。

家が好き、な夫は常々、家選びは不動産屋さん選びが重要やねん、と言っていましたが、改めてその意味を実感しました。

結局、事務所には3時間程度滞在しましたが、居れば居るほど魅力が増す空間で、帰る前につい、もう一度内装を見ても良いですか?と図々しくも聞いてしまいました。すると、不動産屋さんの方は、バックオフィスまで案内してくださって、パソコンが並ぶ部屋から見える坪庭まで覗かせてもらうことに。

いい家を見てほくほく、なわたしたちでしたが、いざ帰路につくと、預けたむすめのことが気になってしまい、足早に友人宅に向かいました。

パンデミックの中、なかなか外に出ることがないわたしたちは、体力、精神力を使い果たし、くたくたで、だからこそ食べたお昼ごはんはおいしかった。

これはお昼ごはん中に見つけたカイコガです。腕にのるとすごくふわふわしていました。

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